内部被曝線量計算原理 2(1個の崩壊による各器官の線量(SEE)を求める)

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1個の崩壊による各器官の線量(比実効エネルギー:SEE)を求める 詳細を
ある線源器官で発生した放射線の全エネルギーの内, ある標的器官に吸収される割合を吸収割合(Absorbed Fraction: AF),
標的器官1g当たりに吸収されるエネルギーの割合は 比吸収割合(Specific Absorbed Fraction: SAF)と呼ばれる。

透過性の放射線(X,γ線)のSAFは,MIRDファントムを用いた コンピュータシミュレーションの結果が、ICRP Publ. 23に記されている。

非透過性(α、β線)の放射線については,線源器官内ですべてのエネルギーを失う,
すなわち,線源器官と標的器官が一致した時のみ,SAFを(1/器官質量)とし, 他の場合はSAFを原則的に0とする。

  equation24

1にICRP標準人の線源器官と標的器官を示した。 表内で同左とあるものは、式(1)が適用できるが, 内容物(C)と壁(W)の関係にあるものは片方から照射されるので,

equation31

の関係が成り立つものと考えられる。
 骨については線源器官と標的器官が微細に入り組んでいるため 種々の考察の結果、割り切りを導入して,表2 の値をICRPは採用している。

   table38
表 1: ICRP標準人の線源器官と標的器官
     table47
表 2: 骨にある放射性核種の線量算定に用いられるAF

ここで,対象核種がきまれば,1変換当たりの透過性,非透過性成分の エネルギーと放出割合にSAFを乗じてそれらの和をとることにより,
ある核種がある線源器官で1変換したときの,標的器官の1g当たりに 吸収されるエネルギーを求めることができる。
この値を線質係数(放射線の種類による補正)で補正したものは,
比実効エネルギー(Specific Effective Energy: SEE) と呼ばれる。

equation62
ここで,
tabular69

SEE表は核種ごとに、線源器官と標的器官のマトリクスとして用意しなければならない。

崩壊の総数(US)と線量の計算 詳細を
一方,図 2に示す 、代謝モデルを解くこと により,各々の線源器官における変換の総数を求め,
これにSEEを乗じ,各々の線源器官からの線量を標的器官で総和を とることにより,預託線量(等価線量)を求めることができる。

   figure73
図 2: 代謝モデル

equation80

ここで,

tabular87
1.6 x 10-10: 1Mev/g をジュール/kg に変換

|US 数列(線源器官)| X |SEE 行列(線源器官X標的器官)| =|等価線量 数列(標的器官)|

求められた各線源器官の等価線量に組織荷重係数を乗じ、 加算したものが預託実効線量となる。

預託実効線量=|等価線量 数列(標的器官)|X|組織荷重係 数列(標的器官)|


なお,ICRP Publ. 23に記されているSAFは, 標準人についてのみ与られており,標準人以外の体格モデルには 使用できない。
IDESでは,器官の縮小率による 体格変換法を用いて,異なる体格に対しても 対応できるようにしている。

実際には娘核種にも対応させる必要があるため、娘核種がある場合は繰り返し計算 される。
計算結果例(Cs-137:日本人成人)
組織荷重係数について 詳細を
組織・臓器 組織荷重係数
Publ 23Publ 60Publ 103
副腎
膀胱0.050.04
0.120.12
小腸
大腸上部
大腸下部0.120.12
腎臓
肝臓0.050.04
0.120.120.12
卵巣精巣と同じ精巣と同じ精巣と同じ
すい臓
ひ臓
精巣0.250.20.08
甲状腺0.030.050.04
0.01
胸腺
子宮
乳房0.150.050.12
赤色骨髄0.120.120.12
骨表面0.030.010.01
食道00.050.04
唾液腺0.01
皮膚0.010.01
筋肉0
残りの組織0.30.050.12
合計111
組織荷重係数は何回か変更がなされている。
内部被曝計算システム:IDESは開発時期が古いので ICRP23 のものを採用している.
  • 卵巣と精巣は同じ値で、どちらか線量の高い方のみとする。
  • ICRP23の残りの組織では線量の大きい組織5個に各々0.06を与える。
  • ICRP60の残りの組織は副腎、脳、大腸上部、小腸、腎臓、筋肉、膵臓、脾臓、胸腺、子宮

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