
国際放射線防護委員会(ICRP)は昨年11月、原子力発電所の作業員やX
線技師などの職業で受ける放射線の限度を引き下げる内容の新勧告を採択し、今
月中にも公表します。ICRPは放射線防護の基本原則を検討し、その成果を勧
告や報告書として出していますが、今回の勧告は、1977年に出された勧告の
改訂版です。主な改訂の目的は、安全性の見地から職業で受ける放射線の限度を
引き下げることで、放射線防護をより確かなものにしようということです。この
改訂の背景には、広島や長崎の原爆生存者のデータの再評価や、最近のデータに
基づいて放射線の危険性を見直したことなどがあげられます。
新勧告では、職業人が受ける放射線の限度を、現行の年間50ミリシーベルト
から、5年間で100ミリシーベルト(年間平均で20ミリシーベルト)に引き
下げ、さらにどの1年についても50ミリシーベルトを越えてはならないとされ
ています。一般住民の放射線限度は1985年のICRPパリ声明ですでに引き
下げられており、現行の年間1ミリシーベルトの基準は変わりません。
ICRPは、放射線の専門家が組織する独立した機関で、勧告の内容は拘束力
を持つものではないのですが、従来から、各国政府はICRP勧告を尊重すると
いう態度をとっています。日本政府も、この新勧告に基づき、放射線障害防止法
などの国内関係法令の改正についての検討作業を始め、首相の諮問機関である放
射線審議会での調整が始まっています。
法改正には数年かかると思われますが、原子力発電所などの現場では、すでに
新基準による内部運用が検討されています。というのも、従来から放射線作業者
はできるかぎり放射線を受けないようにするという基本原則があり、これに基づ
き、作業者の安全が最優先されているからです。

目次・検索へ戻る
ホームへ戻る