その他 放射線の人体への影響 放射線被ばくと死亡危険度 線量率換算・目安線量

(1)放射線障害

 人体が高レベルの放射線をうけたときの影響(放射線障害)には、大きくわ
け身体的影響と遺伝的影響とにわけられます。身体的影響は放射線をうけた個
人だけにあらわれる影響であり、遺伝的影響とは放射線をうけた人の子孫にあ
らわれる影響のことです。なお、特殊な場合ですが、放射線をうけた胎児にあ
らわれる影響は、身体的影響になります。
  1. 身体的影響  全身に高レベルの放射線をうけたときの身体的影響には、数週間以内 に影響のあらわれる急性効果と、数年から数十年先にあらわれる晩発効 果があります。身体的影響のあらわれ方は、うけた放射線の量が同じで も年令、性別、個人差などによって差があり、また、胎児や子供は大人 にくらべて放射線に対して感受性が高いと考えられています。
  2. 遺伝的影響  生殖腺が高レベルの放射線をうけると、生まれてくる子供に異常があ ったり、正常に生まれても後の世代に影響をおよぼすことがあります。 これらの遺伝的影響は、放射線によって生殖細胞に突然変異がおきて生 じるものですが、自然におこる突然変異とあらわれ方が同じなので、区 別は非常にむずかしいとされています。
  3. 回復現象  少量の放射線を長時間にわたってうける場合と一度に同じ量の放射線 をうける場合とでは、影響は前者の方がはるかに少なくなります。これ は、細胞や組織には放射線による損傷を修復する能力があるからです。

(2)放射線障害と限界線量(しきい値)

 放射線の障害には、ある量以上の放射線をうけないとおこらないもの(非確
率的影響)と、うける線量がゼロでない限り、小さい確率ではあるがおこると
されているもの(確率的影響)があります。つまり、前者は限界線量(しきい
値)があり、白内障や不妊などで、後者は限界線量(しきい値)がないと考え
られるがんや遺伝的影響です。
 放射線による人体への影響については、被ばく線量が非常に高いレベル(数
百ミリシーベルト)については認められていますが、微量の放射線(数ミリシ
ーベルト以下)では何らかの影響が認められたケースはこれまでに確認されて
いません。しかし、放射線防護の立場からは、たとえ確率はごくわずかでもう
けた線量に比例して障害は生ずるとする方が安全であり、このような仮定にた
って放射線防護の対策がとられています。

(3)線量当量限度

 放射線を取扱う職業人や一般人の放射線被ぱくに対して、放射線防護上被ば
く線量について一定の制限を設けています。これを線量当量限度とよび、国際
放射線防護委員会(ICRP)では、下記の表のとおり勧告しています。わが
国でもこの勧告に示された線量当量限度を1989年4月から採用することに
なっています。この線量当量限度のレベルでおこると推定されるがん死亡や遺
伝的影響の発生頻度は、きわめて小さく、ほかの比較的安全な職業でおこって
いるもろもろの致命的リスク(危険度)より、低いところに定められています。
 なお、この線量当量限度は、自然放射線による被ばくと医療行為により直接
うける被ばくを除外しています。その理由として、自然放射線は、地域的な差
もありますし、人為的に制限できる性質のものではないということ、また、医
療行為による披ばくは、診断や治療をおこなう目的のもので、その個人にとっ
ての医学的利益が大きく一般的な制限値をきめることが困難であるためです。
 放射線防護の基本的な考え方として、国際放射線防護委員会(ICRP)で
は、1977年に被ばく線量について合理的に達成できるかぎり低く保つべき
であると勧告しています。
 これについては、不必要な被ばくは、たとえ線量当量限度内であっても、可
能な限り低くなるよう配慮されています。
 一般的にいって、放射線の被ばくを問題にする場合には、体外にある放射線
源からの放射線による体外被ばくと、体内にとりこまれた放射性物質からでる
放射線による体内被ばくとの両方を、どのように防ぐか考える必要があります。
 そのためには、第1に放射線源をできるだけ狭い空間にとじこめること、第
2に必要最小限の放射線のみを取り出して利用するよう努力すること、そして
第3に、出てくる放射線を十分に管理することが大切であり、この3つが、放
射線防護の基本とされています。

放射線の知識 自然放射線 放射能 放射線・放射能の単位 放射線の人体影響
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