自然放射線
放射線は、地球ができたときから自然界に存在しています。この自然界から
の放射線を自然放射線といい、人のうける放射線は大地からの放射線、宇宙線、
体内に取り込んだ放射性物質からの放射線の3つに分類できます。世界平均の
自然放射線からの1人あたりの線量は、ラドンによる肺の被ばくを入れると年
間2.4ミリシーベルト程度です。
単位の接頭語
線源 | *1体外被ばく | *2体内被ばく | 合計 |
宇宙線 | 0.36 | − | 0.36 |
宇宙線生成放射性核種 | − | 0.015 | 0.015 |
天然放射性核種 | カリウム−40 | 0.15 | 0.18 | 0.33 |
ルビジウム−87 | − | 0.006 | 0.006 |
ウラン系列(ラドンなど) | 0.1 | 1.24 | 1.34 |
トリウム系列(トロンなど) | 0.16 | 0.18 | 0.34 |
合計 | 0.8 | 1.6 | 2.4*3 (240ミリレム/年) |
(1988年第37回国連科学委員会より)
*1 体外被ばく−−宇宙や大地などから
*2 体内被ばく−−食物の摂取や呼気などから
*3 1977年国連科学委員会報告までは1ミリシーベルト程度とされていたが、
その後ラドンの影響も加えて評価されるようになり、1988年の報告では、
2.4ミリシーベルト程度とされた。
(1)大地からの放射線
大地を構成している岩石や土壌には、カリウム−40、ウラン、トリウムな
どの自然放射性物質が含まれています。人がこれらからうける放射線の量は、
地域によって異なり、日本では平均して年間約0.34ミリシーベルト程度で
す。
日本国内では、花崗岩地帯の多い関西地方が高く、関東地方は低いという傾
向があり、地域によって大きな差があります。世界には、日本よりはるかに高
い地域かあります。
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(2)宇宙線
地球の外、すなわち宇宙から一次宇宙線(大部分が高速の陽子)が降りそそ
いでいます。一次宇宙線は、大気に入って、空気を構成している酸素や窒素な
どの原子核と衝突して二次宇宙線(高エネルギーの中間子、電子線、ガンマ線
など)を生じます。一次、二次を含め、宇宙線とよびます。
この宇宙線の量は、高さ(たとえば、後にのべるシェット機による海外旅行
など極端な場合もある)と緯度によって異なりますが、日本では平均して年間
約0.3ミリシーべルト程度です。
(3)体内放射性物質からの放射線
食物などに含まれているカリウム−40などの自然放射性物質は、体内に入
ると一部は排泄されますが、一部は体内に残ります。また、呼吸することで、
空気中に含まれているラドンなどの自然放射性物質が体内に入ります。こうし
て、人の体のなかには、いつもほぼ一定の自然放射性物質がたまっていること
になります。身体にとって必要な元素であるカリウムは、放射性のカリウム−
40を含んでいます。個人差はありますが、体重60kgの人の場合、その放
射能は約4000ベクレル程度になります。これらにより日本人の平均では年
間0.35ミリシーベルト程度です。ラドンなどの体内被ばくによる線量は思
ったより大きく全世界の平均値は年間1ミリシーベルト(実効線量当量)以上
にもなります。
くらしの中の放射線
私たちの身のまわりには、前にのべた自然界からの放射線(自然放射線)と、
人工的につくられる放射線(人工放射線)があります。
人工放射線には、医療用X線検査やがん治療につかわれている放射線、核実
験などで生じた放射性物質からの放射線、原子力発電にともなう放射線、工業
や農業の分野でつかわれている放射線などがあります。
私たちがうける線量は、自然放射線によるものが大部分で、その次に医療に
よる人工放射線となっています。日本など先進国では、医療放射線による被ば
く線量は年間1〜2ミリシ一ベルト(国民の平均)といわれています。
たとえは、胃の集団検診1検査では4ミリシーベルト程度、胸の集団検診X
線間接撮影1回では0.3ミリシーベルト程度の被ばく線量になります。
なお、原子力発電等からの一般人への被ばく線量の限度は、年間1ミリシー
べルトとされていますが、実際には施設側の方で充分より低い値になるよう管
理されています。
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