放射線と放射能


放射線とは、光の仲間の電磁波や高速の粒子
物質中を放射線が走ると、その道筋にそって物質の分子が陽イオンと陰イオンに わかれる現象(電離)がおきる。
放射線治療や原子 力の分野で「放射線」というときは、空気などを直接または間接に電離する 放射線(電離放射線)だけをいいます。

光も、紫外線や赤外線も「広い意味」で放射線であるが、 電離放射線には含まれない。
放射線の種類
種類/性質本質質量電荷
エックス(X)線電磁波なしなし
アルファ(α)線ヘリウム原子核大きい+2
ベータ(β)線電子非常に小さい+・−1
ガンマ(γ)線電磁波なしなし
中性子線中性子大きいなし
重粒子線炭素、ネオン、シリコン、アルゴンなどの原子核非常に大きい+6以上

放射能とは、ある不安定な物質(元素)が、みずから放射線を出してほかの物質(元素)に変わる 性質をあらわす場合と、この不安定な物質が1秒間に他の物質に変わる量(能 力)をあらわす場合とがあります。 この不安定な物質を放射性物質といいます。 つまり、放射線は「飛び出てきた」ものですが、放射能は「それを出す」側に 関係する言葉です。
放射能は物の重さなどとちがい、時間とともに次第次第に減っていきます。 その減り方をあらわすことばが「(物理学的)半減期」で、最初100あった 量が、半分の50に減るまでの時間をいいます。また、半減期は放射性物質の 種類によって異なります。なお、一般的にいって、半減期が長ければ長いほど 単位質量・単位時間あたりの放射線の量は少なくなります。
 たとえていいますと、もえている炭火から出る光が放射線に相当し、炭が放 射性物質、炭火のもっている光を出す能力が放射能に相当することになります。

主な放射性物質の半減期

放射性物質の名称記号半減期放射性物質が出す主な放射線の種類備考
炭素−1111C20分ガンマ線人工
酸素−1515O2分ガンマ線人工
リン−3232P14日ベータ線人工
カリウム−4040K13億年ベータ線、ガンマ線天然
鉄−5959Fe45日ベータ線、ガンマ線人工
コバルト−6060Co5.3年ベータ線、ガンマ線人工
ストロンチウム−9090Sr29年ベータ線人工
ヨウ素−131131I8日ベータ線、ガンマ線人工
セシウム−137137Cs30年ベータ線、ガンマ線人工
ラジウム−226226Ra1600年アルファ線天然
ウラン−235235U7億年アルファ線、ガンマ線天然
ウラン−238238U45億年アルファ線天然
プルトニウム−239239PU2万4千年アルファ線人工

放射線の発生
 すべての物質は、原子があつまってできています。原子の中心には原子核が あり、そのまわりに負の電荷をもった電子があります。  原子核は、正の電荷をもった陽子と電荷をもたない中性子のかたまりです。 放射線は、おもに陽子と中性子の結合状態が不安定なとき、より安定な状態に なろうとして、その原子核から放出されます。  たとえば、ウラン−238という放射性物質の場合は原子核内の陽子2個、 中性子2個のかたまり、すなわちアルファ線という放射線を放出して、トリウ ム−234という別の放射性物質になります。コバルト−60の場合は、原子 核の中性子1個が陽子に変化し原子核内から高速の電子(ベ−タ)線、ガンマ 線などの放射線を放出し、ニッケル−60という安定な物質になります。以上 が、放射性物質から放射線が放出される形の一例です。  また、健康診断でつかわれるエックス線やがんの治療につかわれているエッ クス線・電子線などは、エックス線発生装置や電子加速器を用いて人工的につ くることができます。  サイクロトロンという加速器を用いると、陽子や重陽子などの原子核(イオ ン)も加速できます。また、こうして加速されたイオンを金属に衝突させ、速 中性子線を発生させることもできます。
放射線、放射能の単位  放射性物質の量をあらわす放射能の単位としては、ベクレルという単位があ ります。1秒間に1個の原子核が、自然に壊れるときの放射性物質の放射能を 1ベクレルといいます。
 放射線の量をあらわす言葉として、照射線量、吸収線量や線量当量などがあ ります。照射線量は、エックス線やガンマ線だけにつかわれ空気を電離する能 力であらわされるもので、たとえば人体にどれだけあたっているかというよう なときの目安になります。放射線は、人体のような物質にあたると、放射線の エネルギーの一部または全部がその物質に吸収されますが、単位質量あたりに 吸収されたエネルギーの量を吸収線量といいます。線量当量は、吸収線量が同 じでも放射線の種類とか性質(エネルギー)によって人体に与える影響に差が でてくることを加味したもので、人体に与える影響の程度を示すものです。す べての形の被ばくを全身被ばくに換算した線量を実効線量当量といいます。



単位の接頭語
記号読み倍数
mega メガ106100万倍
kilo キロ1031000倍
milli ミリ10-31000分の1
μmicro マイクロ10-6100万分の1
nano ナノ10-910億分の1
pico ピコ10-121兆分の1

[実効線量当量]
 放射線によって身体の各細胞が、不均等に被ばくする場合、被ばくした組織
のそれぞれの線量当量に発がんなどの重みを付けて合計し、全身被ばくに換算
したもの。

放射線の知識 自然放射線 放射能 放射線・放射能の単位 放射線の人体影響
αβ線の飛程 γ線の作用 光子反応断面積 原子の光子反応断面積 放射線被爆と死亡危険度
ヨウ素の代謝モデル セシュムの代謝モデル 内部被曝線量計算原理1 内部被曝線量計算原理2(SEE)
ホーム 写真 地図 その他 外部
Hongo's HomePage L h